政治は利害調整・行政は所得再分配

アッキード事件」に反発=安倍首相

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かつて、助役(副市長)へ昇任した人物と面会した時、彼は語った。
「我々役員・幹部が法律通りの仕事しかしないのであれば
 役員・幹部である必要はない。それは係長の職務だから」
行政機構(地方自治体)の役職は、係長までは一般職の自治労組合員であるため
労働争議の権限はあっても、公務における決裁権や決定権は与えられていない。
管理職である課長職になってからは、自動的に組合から脱会し決裁権が与えられる。
この権限の違いは大きい。
この助役の主張は、法令通りの機械的な公務執行は
権限も責任もない係長職までの仕事であり
それ以上の役職者に求められるのは、法令の柔軟な拡大解釈により
不可能を可能にする裁量とノウハウであるという意味だ。
これによって、従来の法解釈では不可能だった物事を可能にすることで
市民の希望・要求を叶え、実現してやることが行政サービスの向上であり
権限を持つ役員・幹部の使命であるという主張である。
              ◇
かつて国交省OBだった脇雅史元参議は、アベノミクス第二の矢に規定された
公共投資による景気対策の成果を、より確実にするため
公共工事発注後も、発注者は元請けと下請けの民間取り引きに
介入すべきと主張していた。
長引いた公共投資削減による疲弊から、建設業界は不当廉売の告発も覚悟の上で
熾烈なダンピング合戦が常態化していた。
しかし、経済原則を無視した不採算前提の施工では
景気波及効果どころか、手抜き施工や劣化資材の使用など
施工の品質それ自体が危ぶまれる。
このため、国交省は「安ければ良し」とする会計法の趣旨を無視し
積算基準を実勢価格に合わせて適正化し
施工者側の適正利潤を確保する方向へとシフトした。
脇参議の主張は、その代わりに元請けによる下請けいじめ
下請けへのダンピング競争の強要による波及効果の減殺を防止するため
発注者たる行政が、民間取り引きに対して監視・介入すべきというものである。
ただし、それによって官制談合との疑念を招くリスクもあるため
介入を合法化するための法制と仕組みを検討していたが
思わぬ政争に巻き込まれて退任を余儀なくされ
この法案は日の目を見ることはなかった。
              ◇
違法・脱法は赦されないが、政治とはそもそも利害調整機能であり
行政は所得再分配機構でもある。
弱者救済のために、富の偏在を是正・調整するのが使命であるから
これ自体を否定することは、政治・行政の役割を否定することでもある。
公費支出によるアベノミクスの、景気対策としての有効性を高めるには
とかく公益を独占したがる利己的な企業社会に対して
自由放任主義ではならないと主張するのは、このためである。