天下りも様々

文科省天下り問題、調査班に弁護士12人追加選任

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天下りそのものを正当化する気も、否定する気もないが
問題は解釈の仕方と、勤務実態にあるだろう。
天下りは、別の表現で言えば「人材リサイクル」と言える。
政府省庁の官僚といえば、事務吏員は法令運用の当事者であるから
法律家よりも精通した法務のプロである。
技術吏員の場合は、既存技術だけでなく
公務として新技術の開発を手がける場合もあり、最先端の専門家と言える。
彼らの退職年齢は法定60歳だが、現実には後進人事の回転を速め
人材の流動性を確保するため、管理職以上となれば
55歳で勇退早期退職)するのが、政府・自治体に共通する慣例である。
しかし、長寿社会の日本で、55歳で悠々自適の隠居生活は実情に合わない。
長年の実務で培われた経験・知識を、関連業界や団体で
再利用しようと考えるのは不自然なことではない。
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問題は席と肩書きだけを持って、ロクに出勤しないOBや
勤務実態もないOBに高額の報酬、退職金が発生している場合である。
酷いケースでは、勤務期間は2年ずつで、4つもの天下り先を渡り歩き
各2,000万円の退職金を得たという事例もある。
現役退職時の退職金と合わせると、1億円を超えることになる。
天下り先が、自力で収益を得る独立採算の私企業ならば
経営者の方針次第であるからかまわないが
これが政府出資団体や、政府補助金で保護される特別会計特殊法人となると
「国民の税金である公金を以て、何事か」との誹りもやむを得ない。
まして、公権力を持った現職官僚の先輩OBとして、上下関係の力学を行使し
天下り先の利便のために、不公正競争による利得を得たとなれば
まさに公取委の御用となるだろう。
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しかし、業界団体の場合は、天下りがむしろ理想的に機能する場合もある。
団体の会員は同業者であり、利害を同じくする同朋とも言えるが
他方では全ての会員が相互にライバルで、競争相手の敵でもある。
このため役員人事となれば、どの業者がトップに就任し君臨するかで
かなりもめて混乱し、見苦しい確執を生むこともある。
その結果、不公正競争や抜け駆け、嫌がらせ、業務妨害など
業界秩序が保たれず、経済秩序にも悪影響を与えかねない。
こうした場合、どの企業にも属さず、利権とは疎遠の
天下りOBが就任することで、均衡が維持される場合がある。
利害のない第三者として生きてきた官僚であるから
バランス感覚が優れており、不公平・不公正の懸念もない。
このため、お互いに恨みっこ無しと妥協されやすい。
このように、天下りにも功罪があるので
一括りで否定するのではなく、OBが果たす役割と使命
そして、組織においてどのように機能しているのか
まずは実態を知ることが大切だろう。