共産主義が成功できない理由

「新聞読めば自民支持しない。その通り」共産・小池氏

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ソ連は共産革命後、70年で崩壊。
東ドイツは西ドイツに併合。
ルーマニアは、大統領夫妻がクーデターで処刑。
カンボジアポルポト政権が自滅。
中国は農業政策の失敗で、鄧小平が改革開放政策により市場主義経済へ転換。
かようにして、共産主義は大国でも小国でも失敗したり
大成できぬ貧困国のままである。
なぜ定着し、安定的な経済成長と繁栄を実現できないのか。
結論から言えば、弁証法で実践するからである。
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共産主義原理のベースは、原子論哲学者デモクリトスの唯物主義と
ドイツ観念論哲学者ヘーゲル弁証法にある。
唯心主義への対置概念である唯物主義は、宗教を否定する。
宗教否定となれば、敬虔で謙虚な信仰心や畏怖心はなく
宗教的モラルや戒律とも無縁である。
これでは、人間が人間らしい人間性と、自戒に基づく良心を持てるはずがない。
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弁証法とは、対立・破壊と変化の繰り返しである。
テーゼとテーゼの対立により、止揚によって常に新たなテーゼを生み出す。
ところが、それに対立するアンチテーゼがさらに現れ
またも角逐の後に新テーゼが生み出される。
いわゆる唯物史観というもので
際限のない戦争、闘争、破壊の繰り返しでしかない。
これでは、国体は安定しない。
しかも、闘争と新テーゼ確立の度に
過去の蓄積を全否定し、破棄して放棄するばかりである。
これでは、文化も歴史も構築されず、前進も成長も進歩も望めない。
共産主義は、それを労働者と資本家の階級闘争に適用してしまった。
賢明な人物ならば、これだけでも共産主義の限界や問題点が見えるだろう。
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そして、共産主義は格差否定を標榜しながらも
実践においては、強固なヒエラルキーを伴うビュロクラシーを以て実行される。
その結果、頂点に立つ指導者には絶大なヘゲモニーが与えられる。
絶大なヘゲモニーを持てば、人はいずれ独裁者へと変貌していく。
中世期の独裁者は、王権神授説が権力の根拠となっていたため
民には過酷でも、神に逆らう真似はできなかった。
だが、共産主義の独裁者には信仰がないのであるから
神をも恐れぬ不敬の輩である。
権力が集中すれば専制政治となり、宗教的戒律がないために自戒による節度もなく
いずれは腐敗し、国富を独占しようとする。
当然ながら、貧困と苛政に喘ぐ民心の怒りを買うのであるから
暗殺やクーデターを恐れて疑心暗鬼となり、政敵を暗殺したり
側近を疑い、試したり粛清を始める。
こうした流れは歴史ばかりでなく、現在の中国、北朝鮮に見る通りである。
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では、どうすれば、成功するのか。
個人的見解としては、弁証法ではなく
カントの批判的解決法を用いるべきだったと考える。
批判哲学は弁証法のベースとなったもので、ベン図で説明される。
それによれば、対立するグループの交わり部分は共有するが
交わらない部分については、各グループの存続可能領域を定め
互いに干渉せずに、共存しようという平和的な思想である。
これが、著書『恒久平和のために』において提唱され
後の国際連盟の起草文ともなった。
日本で言えば、哲学者・西周介の説いた「東アジア共栄圏」に相当する。
したがって、階級闘争を正当化するために
対立と闘争ばかりを繰り返す弁証法を採用してしまったところに
共産主義の致命的な間違いがあったと言えるのではないだろうか。