マスコミに対する世の誤認と勘違い

「プロだったら予算とかギャラなんか考えず完璧な仕事しろよ!」イラストレーターと“王様”態度な困った依頼人

nlab.itmedia.co.jp

長年、出版の世界で生きてきたが、いろいろな偏見に出くわしてきた。
もっとも気に入らないのが、収益なしで発行できると勘違いされることである。
新聞などは、一つ一つの記事が無償であるため
出版・マスコミ関係は、収益は不要と誤認しているのだろう。
しかし、新聞は購読料やスポンサーからの広告収入で運営されているのであって
記者も経営者も、霞を食って生きる仙人ではない。
酷いケースでは「収益を伴う媒体の取材は受けない」などと
社会的無知をさらけ出す官僚がいたりする。
行政の年間予算の、財源は何たるかを知らんのか。
行政は、税金が年間予算として用意され
官僚の給与も公務員法で保証される社会主義体制だが
マスコミはあくまで私企業であり、資本主義に生きているのであるから
収益なくしては納税もできないのだということが、実感できないらしい。
             ◇
かつて、ある製薬会社に取材を申し込んだ。
その後、その会社の総務部次長を名乗る人物から、不在中に電話があった。
電話を受けた女性スタッフは、いきなりその人物から
「あんたらは○○(ゴロ雑誌)という雑誌を知っているか」
「それと似たようなものか?」など、無礼千万の内容だったようだ。
聞いて瞬時に頭に血が上り、アポなしでその人物を訪問した。
女子社員がお茶を運んできたが、次長というその御仁はそれを制止した。
「うちのスタッフから聞きました。
 あの雑誌と当社と、何の関係があるのですか」
と、さっそく問い詰めた。
だが、それには答えず
「私は警察OBで、長年ヤクザ者を見てきた」
と、的外れの回答。
以後、以下のようなやりとりが続いた。

「お宅が警察OBであることくらいは、聞くまでもなく分かっています。
 どこの企業も総務付きの次長職といえば
 押し売りやヤクザのタカリ対策のために
 警察OBを用心棒や番犬として配置していることが多い。
 お宅の無礼な態度からも、すぐに分かることです。
 それより、我々がヤクザ者に見えるのですか??」

「どこも似たようなものだ。第一、営業をするだろう」

「お宅、何年社会人をやってきたのですか?
 警察OBとはいえ、私企業が収益を得るために営業活動をするのは
 当然であることくらい、分からないのですか。
 現に、こちらの企業にも営業部があり
 営業マンが営業活動をしているではありませんか。
 お宅の人件費は、どこから出ていると思うのですか」

「生意気なことを言ったところで
 お宅なんぞは、うちの倅と似たような歳だから、まだまだ」

「何がまだまだなのですか。お宅の倅がどうしたのですか。
 お宅の倅と私に、何の関係があるのですか。
 お宅の倅の出来がいいのか、悪いのかは知りませんが
 私はお宅の倅ではありませんよ」

押し問答が続いた。
そこで、マスコミの成り立ち。取材活動の理由・目的。
近年のマスコミ事情、ゴロ雑誌の何たるかなど
駆け出しの新米に教えるかのようにして
いい歳をした初老のOBに、初歩の初歩から噛んで砕くように教えた。
さすがに反論できずに、渋い表情で黙り始めた。
それでも悔しいのか、唐突に「吉田茂を知っているか?」
と、アサッテの質問。
アホかこいつは、と内心で思いつつ
「知らない人が、いるのですか??wwww」と、笑い飛ばしてやった。
そして
「あなたのような御仁を抱えるような企業が
 どの程度のものかは、よく分かりました。
 ズバリ言うが、取材するだけの価値はないので
 今回の申し出は撤回します」
と言い残して、社屋を後にした。
ただし、帰社してから、その次長の上司である総務部長に電話し
ことの顛末は報告させてもらった。
後は、野となれ山となれ…………